2016/12/27

筒内気流制御関連手法の中間まとめ


即効性観測中運転長時間観測主鏡冷却速度温度均一性コスト製作難易鏡筒機械加工メーカ保証
鏡筒断熱内部XX
鏡筒断熱外部X
排気ファンX
内部気流制御ファンXX
SpotCooler冷気導入XXXX
SpotCoolerRearCell冷却XXX
TECXXX

様々な筒内気流の制御手法の中間的なまとめの表を作った。
それぞれにメリット/ディメリットがあるので、共存させて使い分けるのが
ベストかもしれない。またドームでの固定運用を前提としているので
室内室外移動や、遠征等の条件では全く違う方法がある。

1.鏡筒の断熱
  鏡筒の内側で断熱及び迷光処理する方法は工法もシンプルで効果は大きい。
  が、CPを外すことによるリスクがある。
  鏡筒の外側に断熱材を貼る、あるいはかぶせるのはデザイン的な収め方が
  難しいものの、CPを外さず手軽に着手できるのがメリット。
  閉鎖鏡筒のメリットを活かすべく鏡筒内部環境を均一安定に保つには
  必須の工作である。
  アクティブクーリングの場合の熱収支の改善にも寄与する。

2.排気ファン
  大きな鏡筒内外の温度差があるとき排気ファンで概ね外気温度に
  順応させるのはアクティブクーリングを使わない限りは必須である。
  換気口の有無、HDか否かによってもファンの取り付け方法は異なる。

3.内部気流制御ファン
  境界層流の除去が主目的。内部環境温度が何らかの理由で不均一、あるいは
  開放鏡筒の場合は必須の道具である。観測中も使用するのが前提である。
  閉鎖鏡筒の場合は内部温度が均一化し密度差による乱れが少なくなる効果がある。
  何らかの理由で筒内気流が発生してしまっている状況では、効果は
  必ずあるので、最後の切り札として使える。

4.SpotCooler
  最初に試みた換気口から冷気を吹き込む手法は急速冷却効果が高いが
  主鏡も含めた系全体の温度分布の緩やかさを実現しないと像が安定しない。
  すなわち急速に冷却するが、温度を順応させる時間が必要で観測に短時間に
  入れるわけではない。(順応必要時間の経験値が必要)
  RearCellを冷やすのは間接的にミラーを冷却することになり、時間はかかるが
  均一に冷やしていく効果がある。運転を止めて30分程度で観測に入れる。
  ほぼ実用的な手法として使えるが、温度バランスが保持できる時間が
  限られているのが難点である。長時間の観測には他の手法と併用する必要がある。
  (内部気流制御ファンあるいはTEC)
  環境温度の高低、温度低下のスピード等の外部条件によって最適な
  Coolingの時間や、保持時間が変化するため運用には経験値が必要となる。

5.TEC
  アクティブクーリングとしては最もシンプルで安定性の高い方法となりうる。
  外部環境に依存せずに内部環境をコントロールでき、かつ観測時間中の
  運転が可能なため長時間の観測も最適化可能である。
  当初懸念された結露対策も閉鎖鏡筒のメリットでクリアできそうであるが、
  通年の条件変化を経てみないと結論は出ない。駆動ユニット数や
  駆動電圧等の最適化も同様である。
  レシピーとして最終的なまとめのためにテストをしているが、
  簡単なタイマーによるON/OFFレベルで運用できることを目指している。

「放射冷却」というテーマでActiveCoolingの製作試験を進めてきたが
この点に関しては筆者の熱工学的知見が不足していることもあり、
理論的に実証するには至っていない。
今後の楽しみでしょうか・・・・・。

4 件のコメント:

  1. こんばんは、近内です。
    iwaLab通信講座の受講生としては実に有用な
    表で、頭の整理に最高です。
    鏡筒機械加工のコラムが全部通しでバツになっ
    ているところがミソですね。当方の状況(ミー
    ド16インチシュミットカセの鏡筒が重すぎて
    外せず、穴開け加工ができない)にとっては天
    の助けとしか思えないフィロソフィです。
    メーカー保証のコラムで鏡筒断熱内部、及び
    内部気流抑制ファンがバツになっているのは、
    ミードで言えば保証書の中の、保証の対象外
    となる項目の「...分解や改造が原因と見ら
    れる故障」に抵触するということでしょうか。

    通信講義を追って自分なりに実習を試みてい
    ますが、鏡筒断熱外部+SpotCooler冷気導
    入+SpotCoolerRearCell冷却のコンビで
    何とかやっていけそうなめどが立ったように
    感じています。TECの実装テストはまだです
    が期待しています。

    どんな条件下でも条件なりに抜きん出た惑星
    画像を撮り続けることは最も説得力のあるア
    クティブクーリング法の効果の証明だと考え
    ますので、この点で私も気合を入れて援護射
    撃させていただきたいと思います。

      よろしくご指導ください。

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  2. どうも力強いエールを送っていただき
    ありがとうございます。
    開放鏡筒へ近づけるアプローチのRB星さんが
    素晴らしい成果を上げられています。
    私は新品のC14を買ったので穴を開ける
    勇気が出なかった。
    閉鎖鏡筒の可能性を追求してみようと
    決心したんです。(笑)
    表の最後の2項目はなんとなくメーカの立場を
    擁護した感じで削除しようと思いましたが
    残しておきました。
    ユーザが鏡筒をカスタマイズすることは
    システムとしての望遠鏡が進化していくのに
    必須であると感じますので
    メーカが保証の許容範囲を明示すべきだと
    本当は主張したいところです。
    せめてCPを外すのはOKとか・・・。

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  3. 川崎の長瀬です。
    テストの様子を整理いただき大変参考になります。いや、ここまでの熱意、敬服して拝見させていただいております。固定の観測設備、メーカー保証、など条件によって選択肢は変わりますね。私は鏡筒内循環のみ試行中ですが、その効果を見ることができる条件(シーイングと生活パターン)がなかなか訪れません。じっくりやることにしています。
    来年も続きの情報のアップ参考にさせていただきます。良いお年をお迎えください。
    Clear sky!

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  4. お役に立つようであれば大変嬉しいです。私自身も初めてのトライアルでしたから、試行錯誤しながらリアルタイムにお伝えしました。
    長瀬さんの試行結果も期待しています。経験が積み重なればきっと良い
    解決方法に収束してくることかと思います。
    シーイングの良くなる日を心待ちに・・・。 良いお年を。

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