幾つかの手法を分類しておきます。
1.主鏡面の温度を環境温度に順応させる
1-1. 積極的に低温に冷やす(ActiveCooling)
1-2. 外気で空冷する(PassiveCooling)
(排気ファン)
2.筒内気流を制御する
2-1. 筒の中の気流の乱れの影響を避ける
2-1-1. 鏡筒に出来る限り開口部をつける(トラス等)
2-1-2. 鏡筒を大口径にする
いずれも鏡筒に添った境界層流の影響を避ける
2-2. 筒の中の気流を積極的にファンで乱す
温度差(温度差による空気屈折率の変化)のある上昇、
下降気流を細かい乱流で混合して均一化する。
3.主鏡面に添って発生する境界層流を制御する
ファンで直接あるいは周囲に風を送り境界流を吹き消す
鏡筒上部に送り出す(ATM参照)、あるい主鏡周囲で吹き出させる
といった手法がある。(S&T)
これらの手法を、開放鏡筒(Newton)、閉鎖鏡筒(SCT)の
特徴を踏まえて選択する。
また観測地の気候条件も大きく選択に影響する。
日本は昼夜の温度変化が少なく湿度が高いが
外国では大陸性の温度変化が大きく湿度が低い環境もある。
これはオーストラリアやアリゾナでActiveCoolingを選ぶ例が
あることにも関係する。
主鏡の温度順応が環境温度の変化に追いつかないことが
大きな選択理由であり、また冷やしても結露しにくいことで
実用になっているといえる。
このあたりの事情を踏まえ
日本におけるActiveCoolingの可能性をこれから考えていきたい。
1.SpotCoolerの利用
2.TEC(ThermoElectricCooling)の利用
この2つについて進めていく。
こんにちは、近内です。
返信削除筒内気流のコントロールという避けて通れない問題について、総合的、客観的かつ論理的に整理して議論を進めておられて、恐ろしく参考になります。名教授の講義を受講する気分ですね。機会があれば将来天文雑誌等で広く天文ファンの啓蒙に貢献していただければと思います。さらに望遠鏡メーカーにも建設的な影響を与えることも期待できると思います。
筒がある限り筒内気流は必ず起こると考えています。昔、上野の国立科学博物館の
夜間公開をお手伝いしていた折に、ドーム開けたての20cmニコンF/18セミアポと、西村製村山鏡20cmF/8経緯台の筒内気流をチェックする機会が何度もありましたが、季節にもよりますが、屈折の筒内気流は反射のそれの数分の一以下で、屈折は覗き始めからよく見える、という通説はその通りであると感じていました。屈折では筒先の対物玉の位置、また屈折の光束は円錐形の先細り(根元細り?)の一方通行なのと、余裕のある鏡筒径と適正な絞りの配置が貢献しているのかなと想像していました。一方反射ではハーシェル式や、伝説的なパロマーの吊り籠内プライムフォーカスでもない限り、光束は筒内気流中を二重、下手すると三重折り返し/折り曲げになりますから、被害甚大ですよね。筒内気流の影響の大きさについて光束円錐を積分して解析した論文を読んだ記憶があるのですが、どこだったか思い出せません。
私のミード41cmシュミットカセは重くて人力で鏡筒をはずすのはほぼ不可能なので、iwaLab通信講座で勉強しながら、自分なりの対策を模索しようと考えております。将来、講座でvacuum telescope等についても考察していただけるかと期待しております。 またよろしくお願いいたします。
どうも体験に基づいた貴重なコメントありがとうございます。
返信削除筒内気流に関しては多角的な視点から解決策を見出す必要があると
痛感しています。
以前は現実的ではなかった手法が、
低振動のファン、TEC、高精度の温度センサ、
加えて革新的な画像センサと画像処理ソフトウェアなど
を加味した総合的なパフォーマンスが問われます。
これから比較・評価されて惑星観測の日本における
「定石」が生まれる過程であると考えています。
旅行中でとりあえずのコメントへのお礼です。
このテーマは「観測」を基本に据えた
AmateurAstronomerが核心的な面白さを得られる
チャンスですね。